外国人観光客向けの観光プロモーション映像5選

近年、政府によって国を挙げての観光立国化が進む日本。実際に訪日外国人は増加を続けており、東京の浅草、京都などといった主要観光地は、もはや日本人より日本人以外の観光客の方が多いのではないかと思われる盛況ぶりです。
いわゆる「有名観光地」以外の地方自治体も、外国人観光客を呼び込むべくプロモーション活動に力を入れています。特に目立つのは、映像を利用した観光プロモーションです。短時間に盛り込める情報量、視聴者に与えるインパクトにおいて優れる映像は、観光プロモーションの大きな柱の一つとなっています。
今回の記事では、そうした外国人観光客向けの観光プロモーション映像を5つご紹介します。

 

目次

1)東京都中野区

2)沖縄県

3)佐賀県

4)福島県&茨城県&栃木県

5)ANA

まとめ

 

観光プロモーション映像 1)
コカ・コーラ ボトラーズジャパン

2017年1月、東京都中野区が外国人観光客向けのPR動画とPRパンフレットを作成、公開しました。
中野区には、サブカルチャーの聖地「中野ブロードウェイ」があり、国内外のオタクに長らく愛されてきました。しかし、PR動画では中野ブロードウェイだけにとどまらず、中野区のスポット・食べ物・イベントを幅広く紹介しています。
ポイントになるのは、区内にある大学の留学生五人の意見を参考に紹介する観光スポットを選んでいる点です。五人は動画の中でも案内役として登場します。このような作り方自体からも、観光客を呼び込みたい中野区の立場からではなく、実際に訪れる観光客目線で動画を作成しようという思いが表れています。
ちなみに、PR動画で紹介されたスポットをより詳しく説明しているのがパンフレットです。フロー性の強い動画とストック性の強いパンフレット(文字情報)。情報媒体の性格の違いをうまく利用している例でしょう。

http://www.visit.city-tokyo-nakano.jp/category/walking/scenery/42341

 

観光プロモーション映像 2)
沖縄県

沖縄と言えば、日本人の目からすると押しも押されもしない一大リゾートスポットなのですが、外国人観光客の盛り上がりは(日本人と比べると)まだまだ小さいのが実情。特に外国人観光客の大半が台湾や韓国などの東アジア地域から訪れているということで、その他の地域からの観光客を呼び込むプロモーションが進められています。
その一環として話題を呼んだのが、「OKINAWA: The Secret is Out」というキャンペーンです。中野区の動画で留学生の目から観光スポットの案内が行われていたのと同様、本キャンペーンの動画もシンガポール、フランスなど六ヵ国の人物が登場。ドキュメンタリー風の凝った作りは、外国人スタッフによるものというのも驚きです。
沖縄の美しい自然や豊かな食文化が紹介されているのはもちろん、最もアピールされているのは沖縄の解放感や心安らかになれる雰囲気そのもの。映像作品としてもクオリティの高いプロモーション動画となっています。

http://beokinawa-pr.jp/secret/

 

観光プロモーション映像 3)
佐賀県

佐賀県では、県内の観光スポットや宿泊場所、温泉地やグルメを幅広く紹介するアプリを作成。アプリへの動線として、一分あまりの短い動画を作成・公開しています。
この動画自体は、佐賀県の魅力を直接打ち出すようなものではありません。むしろ、内容のおもしろみによって、ソーシャルメディアでの拡散を狙ったかのようなユニークさが売りです。つい再生してしまう「あざとさ」と、「これはひょっとして…」という「予感」、「ああ、そういうことか!」と感じさせられる「意外なオチ」が見事に一分あまりの中に盛り込まれています。
動画自体に佐賀県の観光地のPR効果はないのですが、おのずとアプリの内容の説明に持って行かれるうまさがあります。なお、アプリは英語、中国語、タイ語など六カ国語に対応しています。

http://saga-travelsupport.com/lp/

 

観光プロモーション映像 4)
福島県&茨城県&栃木県

福島県と福島の民放4社が中心となり、広告代理店や海外のクリエイター、はては海外のYouTuberが出演、福島県・茨城県・栃木県がプロデュースする大規模なキャンペーンがDiamond Route Japan – Fukushima, Tochigi, Ibaraki」です。
特定の地域や自治体だけではなく、東京を起点として茨城~栃木~福島を結ぶ観光ルートを設定。これを「ダイヤモンドルート」と呼んで動画を作成し、インバウンド客の呼び込みを狙った映像作品となっています。
内容は「HISTORY」「OUTDOOR」「HEALTH&LIFESTYLE」「NATURE」の四種類から構成されており、外国人が好みそうな日本文化がアピールされています。詳細な内容は、リンクされているGoogle検索画面からチェックするというのも斬新です。具体的な情報の提供よりも、「行きたい!」という感情に訴えかけることに全力を注ぎ込んだハイクオリティな映像ばかりです。

http://diamondroutejapan.com/

 

観光プロモーション映像 5)
ANA

最後は、自治体ではなく航空会社であるANAによる日本紹介サイトです。日本国内の都市の魅力、「道(DOU)」「COSPLAY」「WASHOKU」など、多様な切り口から日本の魅力を存分に伝えてくれています。
やはり文字情報は少なく、ダイナミックな映像によってインパクトを与えることが目的となっているように感じられます。ただし、動画コンテンツ量はこれまで紹介してきたキャンペーン・サイトよりかなり多く、内容も細分化されています。たとえば、「WASHOKU」の中には「ODEN」「WASABI」など十三種類の動画があり、和食について細かく知ることが出来るようになっています。
実際に日本に行きたい外国人にとって、「日本ってどういうところ?」という疑問に端的に答えてくれるサイト構成と言えるでしょう。

https://www.ana-cooljapan.com/

 

まとめ

5つの動画のご紹介だけですが、バラエティーに富んだ内容のハイクオリティな動画が、次々と作られていることはお分かりいただけたと思います。世界中から容易にアクセスすることが出来、短時間で興味を喚起出来る映像は、今後もプロモーションツールの主役であり続けるでしょう。
しかし、映像プロモーションは当たり前の存在になりつつあります。今後は、ざっくりと「外国人」に向けて作られてきた作品が、ターゲット層に応じて作り分けられていく時代になると考えられます。たとえば、アメリカ人にはオリエンタリズムを強調した作品、ヨーロッパ人には職のヘルシーさを強調した作品、アジア人には製品・サービスのコストパフォーマンスを強調した作品など、「ペルソナ」を意識することが求められるかもしれません。
どの自治体も映像を作るようになった今となっては、ただ予算をかけて映像を作成すればよいというわけではなく、緻密なマーケティング戦略の一環として映像が求められていくはずです。