1. この記事の要点
BCP教材を動画で標準化するなら、最初に「誰が・いつ・どこで・何を判断するか」を役割別に固定し、「まぎれやすい場面(安否確認、初動連絡、出社判断、拠点閉鎖、情報発信)」を“判断基準つき”で見せるのが効果的です。
動画は長尺1本より「2分×章立て」で分割し、運用は更新トリガー(組織変更・連絡網・拠点変更・システム変更)をルール化して、差し替え前提の部品設計にします。
安全教育とセットで回す場合は、行動の型(避難・報告・復旧)を映像で統一し、最後に理解確認(ミニテスト)を入れると実務に落ちます。
2. なぜBCPは動画で標準化すると強いのか
BCPは、平常時には読まれにくく、緊急時は冷静に文章を読めません。動画は「その場で何をするか」を視覚的に再現でき、部署や拠点で起きがちな判断のブレを減らせます。
- 文章:正確だが、緊急時に参照されにくい
- 動画:行動の再現が早く、判断の順序を伝えやすい
- 最適解:動画で“行動と判断”を標準化し、詳細は手順書にリンクする
3. 企画の出発点:役割ごとに「判断の責任」を切る
BCP教材が機能しない原因は「自分が何をするか分からない」ことです。動画は役割ごとに分けるほど実務に刺さります。
3-1. 役割の分け方(例)
- 全社員:安否確認、初動連絡、出社判断、避難、情報の取り扱い
- 管理職:指揮系統、稼働可否判断、部下の状況把握、代替要員の手配
- 総務・人事:安否集計、拠点対応、備蓄、社内周知、問い合わせ窓口
- 情報システム:システム復旧、アカウント、VPN、バックアップ、監視
- 広報:対外発信の承認フロー、SNS対応、誤情報対策
3-2. 目的とKPI(測れる形にする)
- 安否確認の回答率(例:30分以内80%)
- 初動連絡の到達率(連絡網の稼働確認)
- 初動行動の正答率(理解確認テスト)
- 訓練時の所要時間(避難・集合・点呼)
4. 「まぎれやすい場面」を動画で見せる(ここが肝)
BCPは、曖昧な場面で判断が割れます。だから動画で「やること」と「判断基準」をセットで見せます。
4-1. 安否確認(最初の10分)
- 何を、どの手段で送るか(安否システム、社内チャット、電話の優先順位)
- 回答の基準(無事/軽傷/重傷、出社可否、家族状況)
- 注意点(デマ拡散禁止、個人情報の取り扱い)
4-2. 初動連絡(誰に・何を・どの順に)
- 報告テンプレ(場所、状況、怪我、設備、継続可否)
- 指揮系統が不在の時の代行ルール
- 電話が混雑した場合の代替(チャット・SMS)
4-3. 出社判断(“なんとなく出社”を防ぐ)
- 出社/在宅の判断基準(交通・拠点・ライフライン・会社指示)
- 危険行動の例(徒歩帰宅、無理な出社)
- 集合場所や代替拠点の案内(地図を固定で表示)
4-4. 拠点閉鎖・立入禁止(現場の混乱ポイント)
- 誰が閉鎖判断を出すか
- 立入禁止の範囲と掲示方法
- 鍵・入退室・警備への連携
4-5. 情報発信(社外に出して良い情報・ダメな情報)
- 対外発信は広報・責任者承認が必須(個人のSNS発信を抑制)
- 誤情報への対応(一次情報の確認、発信の一元化)
- 顧客への連絡テンプレ(影響、復旧見込み、代替策)
5. BCP教材動画のおすすめ構成(2分×分割が基本)
長尺1本は見られません。役割別・場面別に分割し、必要なときに必要な章だけ見られる形にします。
5-1. 全社員向け:最小セット(例)
- 1本目(約2分):発災直後にやること(安否確認・避難・初動連絡)
- 2本目(約2分):出社判断と情報の取り扱い
- 3本目(約2分):拠点対応(集合・点呼・連絡)
5-2. 管理職向け:指揮・判断パート
- 判断の順序(人命→安全→重要業務→復旧)
- 代行ルール(不在時の権限移譲)
- 報告テンプレ(状況・要員・設備・継続可否)
5-3. 部品設計(差し替え前提にする)
- 連絡先、URL、担当部署は「最後のカード」に集約(更新しやすい)
- 地図、集合場所、避難経路は「静止画差し替え」で更新可能に
- システム操作(安否システムの使い方)は別動画に分離
6. 安全教育動画とセットで回すときの企画のコツ
BCPは“災害時の行動”、安全教育は“平常時の事故予防”ですが、共通するのは「行動の型」です。動画で型を統一すると現場が強くなります。
6-1. 型を共通化する(例)
- 危険を見つけたら:止める→離れる→報告する
- 異常を見つけたら:電源停止→隔離→連絡
- 災害時:身の安全→安否→初動連絡→指示待ち/行動
6-2. 理解確認(ミニテスト)を入れる
- 各章の最後に1問(正しい判断を選ぶ)
- 間違えやすい場面だけ出題(迷いを潰す)
- 訓練とセットで運用(見た→やった→振り返った)
7. 撮影・編集の実務ポイント(“それっぽい動画”にしない)
7-1. 現場再現は「やりがちな誤り」も見せる
- 良い例だけだと、現場は自分事になりにくい
- よくある誤り(連絡が遅い、勝手に出社、SNS発信)を短く提示し、正解に戻す
7-2. 音が出せない前提で設計する
- 重要語(安否確認、報告先、判断基準)は必ず画面表示
- 文章は短く、動詞を入れる(例:「安否を回答する」)
- 1画面1メッセージ(詰め込みすぎない)
7-3. 過度な演出より「分かる画」を優先する
- カット割りは手順の区切りでのみ変更
- 画面は固定、ズームは最小限
- テンポは早すぎない(理解が追いつかない)
8. 更新ルール:BCPは“必ず変わる”前提で運用する
BCP教材を継続的に使うには「いつ更新するか」をルール化するのが最重要です。更新が止まると、教材が信用されなくなります。
8-1. 更新トリガー(これが起きたら更新)
- 組織変更(責任者、承認フロー、部署名)
- 連絡網の変更(電話、メール、チャット、安否システム)
- 拠点変更(集合場所、避難経路、入退室)
- システム変更(VPN、クラウド、認証方式)
- 訓練結果で問題が出た(実務に合っていない)
8-2. 更新しやすい管理台帳(最低限)
- 動画ID
- 対象者(全社員/管理職/部門別)
- 内容(場面)
- 最終更新日
- 監修者(総務/安全/法務/ISなど)
- 更新トリガー
8-3. レビュー体制(IR/法務と同じで“承認”が必要)
- 一次レビュー:現場(実運用に合うか)
- 二次レビュー:総務/安全(規程との整合)
- 必要に応じて:法務/広報(対外発信の観点)
9. チェックリスト(撮り始める前にこれだけ)
- 役割別に「やること」と「判断」を分けている
- まぎれやすい場面(安否/初動/出社/閉鎖/発信)を網羅している
- 2分×分割で設計している
- 音が出せなくても理解できる
- 連絡先やURLは差し替え前提の部品になっている
- 更新トリガーと管理台帳が用意できる
10. FAQ
10-1. BCP教材は何分くらいが適切ですか?
全社員向けは2分×3本程度から始めるのが現実的です。必要に応じて管理職向けや部門別に追加し、長尺1本にしないのがポイントです。
10-2. どこまで“リアルな再現”が必要ですか?
最小限で十分です。重要なのは「判断の順序」と「報告テンプレ」が伝わること。危険を伴う再現は避け、図解や画面表示で補うのが安全です。
10-3. 更新が追いつかないのですが、どうすれば良いですか?
連絡先やURLなど更新頻度が高い要素を動画本編から切り離し、最後のカードや別ページに集約すると更新負荷が大きく下がります。更新トリガーを台帳に書いて運用するだけでも改善します。
11. CTA(次のアクション)
- BCP教材動画の企画設計(役割別・場面別の章立て、台本テンプレ作成)
- まぎれやすい場面の再現と図解設計(判断基準の可視化)
- 更新ルールと管理台帳の整備(運用できる教材化)







