展示会サイネージは「無音で伝わる」が正解|尺・構成・ループ設計の実務

1. 要点まとめ(先に結論)

展示会の通路で足を止めてもらえる時間は数秒。だからサイネージは「無音でも3〜5秒ごとに要点が伝わる」「高コントラスト・大きな文字」「15〜30秒のシームレスループ」が基本。画面は一画面一メッセージに絞り、ベネフィット→証拠→使用シーン→CTAの順で回す。機材は冗長化し、当日の導線・声掛けスクリプトまで準備。KPIは滞留時間・スキャン数・アポ率で評価する。

2. まず結論:3〜5秒更新・高コントラスト・15〜30秒ループが基本

展示会では、足を止めてもらえるのは短い時間です。この章では「なぜ3〜5秒なのか」「どんな見た目が読まれるのか」「ループを自然につなぐには?」を最小限の基準で揃えます。

  • 3〜5秒切替の理由:歩行速度と視認距離を前提に、最初に判読できるのは約3秒。更新のリズムが滞留を生む。
  • ルックの基準:背景は面で揺れない色/文字は最小40pt相当・見出し72pt以上/コントラスト比4.5:1以上。
  • ループ尺:15〜30秒で一周(最長45秒)。最後1秒で暗転・減速を入れて自然接続。

ひとこと結論:結局、「短く・太く・繰り返す」。これが展示会の標準形。

3. 画面設計は「一画面一メッセージ」

情報を詰め込むほど読まれません。まずは伝える優先度を決め、画面ごとにメッセージを一つへ。

3-1. おすすめの4枚構成(15〜30秒で一周)

  1. 価値提示(ベネフィット)
    例:視線が止まるキービジュアル+「検査時間を50%短縮」
  2. 証拠(数値・導入社数・認証・受賞)
    例:導入社数やアワードのロゴを大きく、正面に
  3. 使用シーン(現場での具体・操作の一瞬)
    例:装置の操作「1・2・3ステップ」
  4. CTA(来場メリット/スキャン誘導)
    例:「15秒で比較資料」QRを左下固定

3-2. 文字量・行数・配置の目安

  • 見出し10〜14文字+補足15〜25文字
  • 行数は最大2行。三行以上は読み飛ばされやすい
  • 重要語は左寄せ・上寄せで視線の起点を固定

3-3. 視線誘導のアニメーション(最小三種で充分)

  • フェードイン
  • スケールイン(105%→100%)
  • 水平パン(ゆっくり、加速→減速で自然に)

※装飾アニメは全体の10%以下。主役はテキストとキービジュアル

ひとこと結論:「一画面一メッセージ」が、3〜5秒で伝わる近道。

4. ファイル仕様と再生安定性(止まらないことが正義)

どれだけ良い内容でも、カクつけば台無しです。現場で止まらない設計を先に決めます。

4-1. 推奨設定の目安

  • 解像度:FHD(1920×1080)または4K(3840×2160)
  • コーデック:H.264 High Profile
  • ビットレート:FHD 12〜20Mbps/4K 35〜60Mbps
  • 色空間:sRGB(会場ディスプレイ前提)
  • フレーム:29.97fps(再生機の安定性を優先)

4-2. 無音ループのコツ

  • 完全無音なら音声トラックを削除(自動再生の不具合回避)
  • ループ境界の白フレーム混入を防ぐ(書き出し前にキャッシュクリア)
  • 最後1秒で暗転・減速を挿入し、冒頭へ自然接続

4-3. 機材と電源の冗長化

  • 再生機:USB直刺しプレイヤーを2台用意し、切替を即時化
  • ケーブル:HDMI×2、延長コード、予備タップ
  • ディスプレイ:輝度400nit以上、反射低減。縦設置は回転対応機種
  • 電源:別系統タップで分散。ブレーカー落ち対策を想定

ひとこと結論:「止まらない」ための準備こそ、最大の集客施策。

5. 当日の運用は「時間帯で切り替える」

固定再生だけではもったいない。混雑・来場者層・時間帯に合わせて最小限の運用を。

5-1. 設営チェック(現地で必ず見る三点)

  • 目線高さ:画面中心が床から140〜160cm
  • 視認距離:2〜5mで見出しが読めるか
  • 照度:反射が強い場合は角度調整、輝度は上げすぎない

5-2. 混雑時の切替運用(短尺差分を用意)

  • 通常:30秒ループ
  • 混雑:10〜12秒版へ切替(冒頭をより強い訴求へ)
  • サムネ(ループ冒頭)を時間帯で変え、訴求点を回す

5-3. 声掛けスクリプト(例)

  • 初動:「どんな用途の映像をお探しですか?」
  • 提案:「展示会なら、3〜5秒で要点が変わる設計が効果的です。15秒の比較動画をご覧になりますか?」
  • 送客:「QRから資料3点をすぐ受け取れます。ブース内で実機も見られます」

現場メモ(小さなケーススタディ)

  • 午前:通常版(価値→証拠→使用→CTA)
  • 午後の混雑ピーク:短尺版へ切替、冒頭を「来場メリット」特化に
  • 終盤:アポ誘導を強めたサムネへ変更

ひとこと結論:「短尺差分」「サムネ差替え」「声掛け」だけで、当日の成果は伸びる。

6. KPIと計測は「滞留→スキャン→アポ」の三段階

動画の良し悪しは視聴数ではなく、商談につながる行動で判断します。

6-1. 追うべき指標

  • 滞留時間(平均/中央値)
  • スキャン数(QR/名刺/来場予約)
  • アポ化率(事前予約→当日→商談)
  • 二次行動(LP遷移→フォーム到達)

6-2. QR・短URLの配置ルール

  • 画面左下固定、サイズは3〜4cm相当で即撮影できる大きさ
  • 文言は「15秒で比較」「資料3点ダウンロード」のように撮る理由を明記
  • UTMで時間帯・サイネージ面を判別し、翌日の流入も追跡

最低限これだけ測る:滞留・スキャン・アポ率。この三点で改善サイクルを回す。

7. よくあるNGと、すぐできる改善

失敗パターンは決まっています。逆のことをすれば、たいてい改善します。

  • NG:文字が小さい/背景と文字色が近い/1分超の長尺を垂れ流し
  • 改善:高コントラスト・大文字・短い画面を回す。15〜30秒のループに分解し、冒頭5秒で価値が伝わる設計へ

ひとこと結論:「読めないものは存在しない」。可読性が最優先。

8. チェックリスト(当日持ち物/設営/運用/撤収)

以下をそのまま配布・転記して使えます。

持ち物

  • 本番データ/短尺差分/旧版バックアップ
  • 再生機2台、USBメモリ2本、HDMI×2、延長コード、予備タップ
  • リモコン用電池、クリーナー、マイクロファイバー布、結束バンド、養生テープ

設営

  • 位置・高さ・角度の最終確認
  • 輝度・コントラスト微調整(会場の照度に合わせる)
  • ループ境界が自然につながるかを目視

運用

  • 時間帯でサムネ/短尺版へ切替
  • 滞留・スキャンを1時間ごとに集計
  • 声掛け文言もABテスト

撤収

  • 機材番号とケーブルをチェックシートで回収
  • 翌日のフォロー用に、QR流入の成績をダウンロード

9. FAQ(よくある質問)

Q1. 尺はどのくらいが最適ですか?
A. 15〜30秒のループが基準。内容が複雑なら最大45秒まで。長尺一本より、短い画面を回す発想が有効です。

Q2. 音ありの動画ではダメですか?
A. 会場は騒がしく音は届きにくいので、無音でも伝わる設計が前提です。必要ならブース内の個別視聴で音ありを用意します。

Q3. テキスト量の目安は?
A. 見出し10〜14文字+補足15〜25文字、最大2行。これを超えると読み切れず離脱が増えます。

Q4. 4Kは必須ですか?
A. 大画面や近接視認では有効ですが、再生機の安定性が最優先。FHDで安定運用できるならFHDを推奨します。

Q5. どのKPIを追えば良いですか?
A. 滞留時間・スキャン数・アポ化率の三点がコア。QRのUTM設定で時間帯・動画差分ごとに評価しましょう。

10. まとめ:「無音前提で、短く、強く、繰り返す」

  • 無音でも3〜5秒で伝わる画面を、15〜30秒で一巡
  • ベネフィット→証拠→使用シーン→CTAの順に回す
  • 高コントラスト・大きな文字・最小限の動きで視線を制御
  • 再生機の冗長化と時間帯の切替運用で「止まらない」「飽きさせない」を担保
  • 指標は滞留・スキャン・アポ率。翌日の追跡までが展示会

11. CTA(次のアクション)

  • 既存サイネージの簡易診断(15分・オンライン)
  • 展示会向けテンプレ動画のデモ(15秒/30秒)
  • 事例まとめPDF(足が止まる画面設計の実例集)

※本記事はBtoB用途に特化した指針です。実会場の条件(照度・通路幅・視認距離)に応じて微調整してください。