制限のあるルールで競合しあう銀行
私達が生活する上で、「お金」の管理を任せる「銀行」。
現在、日本国内には都市銀行と呼ばれるメガバンクをはじめ、195の銀行(信託銀行等もふくむ)がひしめき合っています。
規模の大小や構成に違いはあれど、預貯金管理やカードローン、住宅ローンや投資信託など、提供されるサービスは似たり寄ったり。
こうした類似製品(サービス)を取り扱う銀行が、他行(競合)との違いを見せるにはどうすれば良いでしょうか。
何を伝えたいのか、どう感じて欲しいのか。
狙いはさまざまですが、映像プロモーションを通して達成する目的のひとつとして「企業イメージ」があります。
利用者(顧客/顕在層)、またはターゲット(潜在層)に対し、「私達はこんな銀行(企業)です」と訴えかける方法として、映像を使うやり方ですね。
そんな銀行のプロモーション活動から、銀行イメージ(企業イメージ)に特化した映像をいくつかご紹介したいと思います。
企業が映像プロモーションの制作を行うとき、少しだけ考えておきたいポイントや注意点なども交えてご案内します。
目次
1. 中国銀行 「ちゅうぎんって…」篇
2. 京都銀行 「長ーーーい、お付き合い」
3. 武蔵野銀行 「TALK with ATM」編
4. ジャパンネットバンク 「はじめてのチュ~診断」
まとめ
1. 中国銀行 「ちゅうぎんって…」篇
銀行名:中国銀行
とてもシンプルにまとめた構成です。
生活の中で「お金が動くシーン」を幾つかピックアップし紐づけたものですね。
内容がシンプルなだけに、課題は、見る人が「情報に集中できる状況」をつくることです。
そのため、過度な演出はできるだけ避け、ちょっとした映像処理によるアクションで動きを付けた映像に仕上がっています。
職業柄、「数字」がついて回る提供物ばかりですので、複雑で難しい内容はどうしても敬遠されがちです。
こうした難しいを出来る限り取り払うこと、そして内容に集中しやすい(理解しやすい)本作品は、馴染みやすい映像だと思います。
ただし、それだけシンプルな仕上がりであることから、「内容が頭に残らない」という可能性もあります。
このような懸念点をどうやって払拭するか、というのも映像ディレクションの段階で練り込みたい項目ですね。
2. 京都銀行 「長ーーーい、お付き合い」
銀行名:京都銀行
関西系の銀行CMは、ほんの少し変化球をいれてきます。
コテコテの大阪色を出した「関西電気保安協会」などが有名ですね。
さて今回の京都銀行の場合はどうでしょう。
「言いたいこと」を実直に伝えるのではなく、やや比喩的な表現を使ってアプローチしています。
伝えたい「長いお付き合い」と、映像から伝わる「長い」が、しっかり結びついているのが印象に残ります。
売りたい製品やサービスがたくさんある中で、こうしたイメージを伝える方法としては変化球的なプロモーションと言えるでしょう。
こうした変化球的な映像における懸念点は、「演出に注目が集まりやすい」ということです。
本来、伝えたい内容にフォーカスされるのではなく、見た印象やイメージだけが記憶に残り、内容が浅くなってしまう点ですね。
拡散(バズ)するには良い題材かもしれませんが、内容を目的とする場合は注意が必要です。
3. 武蔵野銀行 「TALK with ATM」編
銀行名:武蔵野銀行
一般社団法人全日本シーエム放送連盟(略称:ACC)主催の、2016年度「ACC CM FESTIVAL」フィルム部門Aカテゴリーにおいて、「ACCシルバー(銀賞)」を受賞した作品です。武蔵野銀行は、映像訴求にも積極的で、過去にも同賞において「銀、銅」を受賞するなどの成果を上げています。
音声アシスタント(iPhone/Siriなど)の様な、「しゃべるATM」をテーマにした作品です。
地域密着できる地銀ならではの、「お客様との深い関係、近い距離」を表現しています。
グッとくる感涙ポイントも入れていますが、何より現代的(今らしい)な掛け合いが映像の楽しさを助長しています。
実際にこんなATMがあると、周囲の人に聞かれて恥ずかしい・・・などの声があがりそうですが、音声サポートなどは特定の層に効果がありそうですね。
こうした本作のように、「心情」に訴えかける部分が強い作品における注意点としては、内容より印象が残るということです。
何ができる、何を提供しているかが解りづらくなってしまうのは、致し方ないのかもしれません。
「感情を揺さぶる」ことに焦点を充てた代償と言えます。
4. ジャパンネットバンク 「はじめてのチュ~診断」
銀行名:ジャパンネットバンク
「誕生月別性格診断で、あなたに合った”はじめてのチュ~”を占おう!」という内容で、「i無料占い」監修のもと作成されたプロモーションです。
テレビや雑誌で見るような、星座占いの様に、「月別」であなたの「はじめてのKiss」を診断する…というストーリーです。
人間、何にでも「はじめて」があるように、「Kissもはじめて」「ネット銀行を使うのもはじめて」の人がいます。
そうした「いろんなはじめてを応援する」をテーマに掲げ、映像活動の一環として作成されたのが本作です。
ネット利用率(主にスマートフォン)の高いのに、まだネット銀行口座を解説していない、若い世代にアピールしています。
明確なターゲットが定まっており、かつターゲットが体感しやすいドキドキを兼ねてのアプローチです。
本作のように明確なターゲットが決まっている場合、対象者に向けてアプローチをするのは至極まっとうな考え方だと言えます。
懸念点をあげるとすれば、対象となる非ターゲット層に敬遠される可能性が高いという点です。
「若い世代の人たちが使う銀行」というイメージを持たれてしまうと、中高齢層は一般的な窓口/ATMのある銀行から、なおさら離れないでしょう。
絞る良さと、絞るリスクは同時に存在するという認識が、前もって必要ですね。
まとめ
同じ「企業イメージ」を題材にして作られた映像であっても、さまざまな表現や面白さは、やはり映像ならではと言ったところですね。
保険業界やタクシー業界なども、同じ様な製品/サービスに縛られる傾向があるため、参考になるかもしれません。
また、映像は万能ではなく、訴求方法や手段(構成やストーリー)次第では、まったくのマイナス印象を与えてしまう可能性だってあります。
だからこそ、安易なディレクションはご法度であり、プロや専門としている部署/担当者に付いてもらうことをお薦めします。