1. この記事の要点
コンプライアンス研修動画で成果を出すコツは「観たか」ではなく「できるか」に設計を寄せることです。
長尺1本の視聴型では定着しにくいので、2〜5分のマイクロ動画+理解確認(小テスト)+現場の行動ルール(何をしたら報告するか)の3点セットで組みます。
特にハラスメント研修は「グレーな場面」をケースで見せ、判断基準と通報導線まで含めて標準化すると実務で機能します。
運用面では、法令・社内規程・窓口情報が変わった時に差し替えやすい部品構造にし、更新トリガーを台帳で管理するのが安定します。
2. なぜ「観るだけ」研修が機能しにくいのか
- 受講者は「視聴した=理解した」と錯覚しやすい
- 行動に落とす基準(何を、いつ、誰に)が曖昧なまま終わる
- ハラスメントなどは判断が割れやすく、文章だけだと自分事化しにくい
- 更新が追いつかず、内容が古いと信用されなくなる
動画化の価値は「行動の標準化」です。映像は見せ方次第で、判断の順序と報告行動を統一できます。
3. 研修動画のゴール設定
最初に「研修後に何ができる状態にするか」を行動レベルで定義します。「理解する」では弱いので、具体動詞に落とします。
3-1. ゴール例
- コンプライアンス違反の兆候を見つけたら、決められた窓口に報告できる
- 利益相反や贈収賄リスクの場面で、判断の前に相談を挟める
- ハラスメントのグレー事例で、何が問題か説明できる
- 被害・相談を受けた時に、初動対応(傾聴、記録、窓口案内)ができる
3-2. KPIの例
- 理解確認テストの正答率と再受講率
- 研修後の相談件数(増えるのは健全な場合もある)
- 匿名アンケートでの「相談しやすさ」スコア
- 監査・ヒヤリハット報告の質(具体性が上がっているか)
4. 全体設計の正解は「短尺分割+確認+行動導線」
おすすめは「2〜5分の短尺動画を複数本」に分割し、各章の最後に理解確認を入れる構造です。現場で必要な章だけ参照でき、更新もしやすくなります。
4-1. 基本テンプレ(1テーマ2〜5分)
- 結論:その場面で取るべき行動
- 理由:なぜそれが必要か(リスクと影響)
- 具体例:よくある場面を再現
- 判断基準:OK/NG/グレーの線引き
- 行動:相談・報告・記録の手順
- 確認:1〜3問のミニテスト
4-2. 章立ての例(コンプライアンス研修)
- 基本:コンプライアンスとは何か、違反の影響
- 情報:個人情報・機密情報の取り扱い
- 不正:不正会計、改ざん、過大請求
- 取引:贈答、接待、利益相反
- 相談:相談窓口、匿名性、報復禁止
5. ハラスメント研修動画の設計ポイント
ハラスメント研修は「概念説明」だけでは現場が変わりません。効くのは、グレーな場面のケースを見せて、判断基準と初動対応を標準化することです。
5-1. ケース設計のコツ
- 現場で起きがちな「言いがちなセリフ」と「構図」で作る
- 一発アウト例より、迷いやすいグレー例を中心にする
- 加害意図ではなく「受け手の影響」と「職場環境」を軸に説明する
- 上司視点だけでなく、同僚・部下・相談を受けた人の視点も入れる
5-2. 必ず入れる3点セット
- 何が問題か:具体的に言語化(人格否定、業務外の圧、性的言動など)
- その場の言い換え:代替表現や指導の仕方
- 相談導線:誰に、どの窓口で、何を伝えるか
5-3. 相談を受けた人向けの初動(短尺で1本作る)
- まず傾聴し、否定しない
- 事実と感情を分けてメモする
- 勝手に解決しようとせず、窓口に繋ぐ
- 報復禁止と秘密保持を伝える
6. 「観るだけで終わらせない」仕組みの作り方
動画は単体では完結しません。視聴後に行動を促す設計をセットにします。
6-1. 理解確認を必須にする
- 各章の最後に1〜3問(判断基準の確認)
- グレー例は「最初に相談する」が正解になる設計に寄せる
- 間違えた場合は該当箇所に戻せる導線を作る
6-2. 研修後の行動宣言を入れる
- 自部署で起こりそうなリスクを1つ書く
- 相談窓口を保存し、迷ったら相談することを宣言する
- 管理職は「相談を受けた時の対応」を一文で宣言する
6-3. 現場で使える資料に繋げる
- 相談窓口カード(連絡先、匿名性、対応範囲)
- 判断フローチャート(迷ったら相談へ)
- 短尺クリップ(30秒の要点だけ)
7. 動画制作の実務設計
7-1. 尺の目安
- 基本:1テーマ2〜5分
- 社内ルール説明:2分程度
- ケース動画:3〜6分(長くするなら分割)
- 窓口案内:30〜60秒(差し替えやすく)
7-2. 見せ方の原則
- 1画面1メッセージで詰め込みすぎない
- 固有名詞や数値は画面に出す
- 音が出せない環境でも理解できるように要点テロップを入れる
- 過度な演出より、判断基準が伝わる構成を優先する
7-3. 表現の注意点
- 法務・人事・労務のレビューを前提にする
- 特定個人や実在事例の特定に繋がらないよう配慮する
- 断定表現は避け、社内規程と整合する言い回しにする
8. 更新ルールを最初に決める
研修動画は更新できて初めて資産になります。更新が止まると、内容の信頼性が落ちます。差し替え前提の部品設計と、更新トリガーを台帳で管理します。
8-1. 差し替え前提にする部品
- 相談窓口の連絡先、URL、受付時間
- 社内規程の条番号や定義
- 外部委託先、ホットラインの案内
8-2. 更新トリガー
- 法令改正、ガイドライン変更
- 社内規程の改訂
- 相談窓口や運用フローの変更
- 研修後アンケートで誤解が多かった項目の発見
8-3. 管理台帳の最低限
- 動画ID
- テーマ
- 対象者(全社員、管理職など)
- 最終更新日
- 監修者(法務、人事など)
- 更新トリガー
9. そのまま使えるチェックリスト
- 研修後にできる状態が行動レベルで定義されている
- 2〜5分の短尺に分割されている
- 各章に理解確認(ミニテスト)がある
- ハラスメントはグレー事例が中心で、判断基準が示されている
- 相談導線が明確で、窓口案内が差し替え可能になっている
- 法務・人事レビューのフローがある
- 更新トリガーと管理台帳が用意されている
10. FAQ
10-1. コンプライアンス研修動画は何分が適切ですか?
基本は1テーマ2〜5分です。長尺にするより分割し、必要な章を探して見られる設計の方が実務で使われます。
10-2. ハラスメント研修は厳しい内容にした方が良いですか?
恐怖訴求だけだと反発が出やすいです。現実に迷いやすい場面を扱い、「判断基準」と「相談導線」をセットで示す方が行動に繋がります。
10-3. 相談件数が増えるのが不安です
研修直後に相談が増えるのは、声が上がる環境が整ったサインである場合もあります。窓口体制と初動フローを整えた上で、推移を見るのがおすすめです。
11. CTA(次のアクション)
- 研修動画の設計支援(短尺分割、ケース設計、理解確認の設計)
- ハラスメントのケース動画制作(現場に合わせた脚本と表現レビュー前提)
- 更新ルールと管理台帳の整備(運用できる研修資産化)








