「商品PR」と言われてもよく方法が分からず、インターネットで検索して(「商品 PR 事例」など)先行事例を研究し、類似のPR方法を立ち上げる企業は意外と多いのではないでしょうか。
先行事例を参考にしたくなるのは、何も自分たちが分からないから、だけではありません。社内でPRについて稟議を上げるときに、どうしても「過去にかくかくしかじかの事例があり、かくかくしかじかの効果があった」というストーリーを語れると説得力が増します。社内を説得するうえでも、先行事例は都合がよいという側面があるのではないでしょうか。
しかし、本当にPRを成功させたければ、ただ事例のパターンをなぞるだけでは足りないはず。やはり、本質をつかんで自社にあてはめないと自分ごとになりませんし、説得力のあるPRにはなりにくいのです。
そこでこの記事では、商品PRを成功させるために必要な「本質」を考えたいと思います。成功したプロモーション活動は、いずれも本質、原理の部分に相通ずるものを持っています。自社の商品と消費者を巡る本質を考えること。その必要性を訴えることがこの記事の目的です。
目次
1)商品PRのキモは「コミュニケーション」
1 PR=売り込みではない
2 商品と消費者のコミュニケーション
3 消費者と消費者のコミュニケーション
2)商品PRの4ステップ
1 ターゲット層の絞り込み
2 商品コンセプト(ストーリー)の練り込み
3 PRチャネルの選別
まとめ
1)商品PRのキモは「コミュニケーション」
1 PR=売り込みではない
PRはPublic Relationsの略語です。一般的に、PRというと就職活動における「自己PR」のように「商品を売り込むこと」という意味で使用されているきらいがあります。しかし、言葉の本義から考え直してみると、PRとは本来生産者から消費者に対する一方的なアプローチを指すものではありません。
むしろ、「パブリック=一般大衆」との関係を構築・維持するための活動は、全てPRなのです。その意味で、PRとは売り込みではなく、商品と消費者、生産者と消費者のコミュニケーションを指していると捉えるべきでしょう。また、PRによって消費者と消費者のコミュニケーション=口コミも喚起出来ることもあります。
2 商品・生産者と消費者のコミュニケーション
商品と消費者のコミュニケーションとは、すなわち消費者が商品に魅力やストーリー性を感じ、購買に至るまでのプロセスを指すと考えてもよいでしょう。
逆に言えば、消費者とのコミュニケーションを喚起するような商品の魅力を、生産者が付加出来るのか、感知出来るのかが課題となります。消費者に刺さる、商品に親しみを感じるだけの魅力をPR活動において引き出すことが、生産者としてなすべきポイントです。消費者の関心事と商品の魅力を結びつけるPR活動が、コミュニケーションを生み出すきっかけとなります。
3 消費者と消費者のコミュニケーション
商品の魅力が消費者に届いたら、消費者同士の「口コミ」によって商品の認知度、好感度が驚くほどあっという間に高まることがあります。大企業に限らず、LINEやツイッターなどといったSNSによって「面白さ」が認知されると一気に情報が広まるのです。こうなると、消費者自身がPR活動に参加してくれるイメージで、むしろ会社側としては広がりを制御することも出来ず戸惑うくらいかもしれません。
なかなか意図的にPR活動によってSNSでの拡散を狙うのは難しいかもしれませんが、こういった可能性のあることは頭に入れておきましょう。
2)商品PRの4ステップ
1 ターゲット層の絞り込み
コミュニケーションを喚起しやすい商品PRとはどのようなものでしょうか。まず考えたいのは、商品を売り込むターゲット層の絞り込みです。マーケティング用語で「ペルソナ」というものがありますが、細かく具体的にターゲットのイメージを考えます。
「20代女性」というざっくりした像ではなく、例えば「東京都出身25歳女性、4年生の都内私立大学卒業後都内広告会社(社員20名の小企業)に就職、現在広告の事務・経理の仕事4年目。コツコツやるのはきらいではないが、そろそろ広告の企画や営業にもチャレンジしたいと考えている。ただし、上司には伝えていない。…(以下略)」のように細かく、目の前にその人の絵が浮かんでくるくらいまで考えます。
ターゲット層をこれ以上ないくらい具体的にイメージすることで、いかに商品を売り込むかも考えやすくなります。
2 商品コンセプト(ストーリー)の練り込み
ペルソナに合わせた商品コンセプトを練り込みます。すでにPRしたい商品が出来ている場合は、ペルソナの関心事とすりあわせられないか検討していきます。
3 PRチャネルの選別
ペルソナがしっかり出来ていると、PRチャネルも自ずと見えてくるはずです。商品次第ですが、20代女性ということでインスタグラムやツイッターで商品アカウントを作成し、PRするのが効果的かもしれません。
まとめ
兵法の大家である孫子の名言に、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というものがあります。敵と味方の実情を熟知していれば、百回戦をしても負けることがない。これは、商品PRにも当てはまる名言です(実際、マーケティング用語にはもともと戦争用語だったものがたくさんあります)。
売るべき消費者のターゲット層を熟知し、それに対する自社の商品を熟知することが出来れば、自ずとPRは成功に近づきます。ただし、この場合の「熟知する」というのは消費者にとって有用な知識であり、細かいスペックや制作費などの生産者側の知識ではありません。その商品が何を実現し、何をもたらしてくれるか…そのストーリーをどれくらい精緻に語れるかが、商品PRの成否を分けるキモであると言えるでしょう。