企業紹介や商品紹介のために、映像を効果的に活用する企業が増えています。かつてはテレビCMだけでしたが、今ではホームページで簡単に動画を設置出来る時代です。CMですと15秒間流れて終わりですが、ネット上の動画であればいつまでも残すことも可能ですし、CMだけでは表現出来ない詳細情報を関連リンクとして同じページに設置出来ます。
今回見ていきたいのは、衣料品メーカーの商品PR映像です。アパレル関連ですと、文字よりも映像によるアピール効果が大きいことは分かりますよね。日本を代表するアパレルメーカーたちが、いかに映像を活用しているのかをチェックしましょう。
目次
1)ファーストリテイリング
2)LAKOLE(アダストリア)
3)夏パン(しまむら)
4)ワコール
5)ADORE(TSIホールディングス)
まとめ
1)ファーストリテイリング
以下のリンクは採用情報ページに設けられたものです。映像の内容自体は商品のCMや会社のCSR活動をアピールしたものなどで、必ずしも求職者向けというわけでもありません。
ファーストリテイリングの映像の特徴は、個々の商品のPR映像であるにもかかわらず、会社のブランドイメージから全くぶれていないことです。そのため、商品PRでも「別々のもの」を紹介されているという印象はなく、あくまで「ファーストリテイリング(ユニクロ)の商品なんだな」ということが一目で分かるようになっています。
商品そのものはもちろん、その裏にあるブランドイメージや企業理念を一貫させることは容易ではありません。少なくとも、商品PRで紹介するものが商品そのものだけではなく、商品を通じて実現したい理念であるということ…映像作成において、この点を意識する必要があるということでしょう。
https://www.fastretailing.com/employment/ja/about/video.html
2)LAKOLE(アダストリア)
LAKOLE(ラコーレ)とは、アダストリアが新たに立ち上げたライフスタイルブランドです。2017年3月に一号店がオープンし、順次店舗が増えていく予定となっています。 ブランド立ち上げから間もないためか、商品単独の映像ではなく、いくつかの商品を紹介した「コンセプトムービー」のみ作成されています。しかし、それでもそれぞれの商品の持つ「ライフ・ファンクション」、たとえば「ヨゴレ、かるく」「つよくて、ながもち」などといった特性が十分に表現されています。
新規事業であることもあり、まずはブランド名やコンセプトの浸透が第一という戦略であると考えられます。アパレルメーカーの場合は、商品のみならず数多くのブランドを事業として進めていることが多いため、PR映像作成においても「何をPRするのか」を深く考え抜く必要があります。
http://www.dot-st.com/cp/lakole_lifefunction
3)夏パン(しまむら)
低価格で普段使いに適した衣服を多数販売するしまむらでは、各商品を宣伝するためのCMがホームページにも設置されています。
以下のURLには、しまむらのCMやメイキング映像などが収められています。映像の入れ替えが頻繁ですが、2017年9月4日時点ではベビー用品のセール告知CMが設置されています。ファミリー層を狙い撃ちしたCMであることは当然ですが、その点を考慮しても「親しみやすさ」が前面に押し出された雰囲気の内容になっています。
CM内容からも、他のアパレルメーカーとの違いが一目瞭然です。商品の性質、CMが想定するターゲット層など、同じくリーズナブルであることを謳うファーストリテイリングとも異なっています。
https://www.shimamura.gr.jp/shimamura/sp/making/
4)ワコール
大手下着メーカーワコールのCMや動画が、一つのページにまとまっています。企業CM、ブランドについてのCM、商品についてのCMがバランスよく作られている印象があります。
商品についてのCMを見てみると、15秒CMよりも商品の「使い方」、すなわち商品がもたらしてくれる「メリット」に重点を置いて紹介されています。これは、ワコールの企業名がポピュラーであえて協調する必要がないこともさることながら、女性下着には機能性が求められることも大きな理由であると考えられます。
LAKOLEのような新ブランドと比較することで、一つ示唆されるポイントがあります。映像PR作成においては、映像で何を表現するかも重要ですが、どのような素材を映像PRで表現するか、という「素材のチョイス」がより重要である、ということです。
http://www.wacoal.jp/news/movie/index.html
5)ADORE(TSIホールディングス)
ADORE(アドーア)は、業界大手のTSIホールディングス傘下サンエー・インターナショナルが手がけるレディースブランドです。「『より美しく』『自分らしい』着こなしを目指すためにこだわりを持ち、ワンランク上の満足感を求める方のためのLuxury clothing」とホームページに記載されているとおり、シンプルながらも高級感のある商品が数多く販売されています。
以下のリンク先にあるのは、2017年秋冬コレクションの映像。特定の商品の宣伝でもなければ、登場する商品名も明らかにされませんが、上記のようなブランドイメージは強く伝わってくる作りになっています。
商品詳細についての情報はホームページに任せ、映像からは余計な情報をそぎ落とすことにより、かえって「こだわり」「自分らしい」というイメージが伝わってきます。
まとめ
大規模なアパレルメーカーですと、ブランドごとにホームページやPR映像を用意していることもしばしばです。したがって、商品のPR映像と言っても「会社の宣伝」「ブランドの宣伝」「商品の宣伝」と、粒度が異なっています。
映像を活用する上で、何を誰にどのように見せたいのかを考える必要がある、ということです。見せたいものの魅力と見せ方、ペルソナを考え抜くことで効果的な作品が出来あがります。是非ご参考にしていただければと思います。